6月、光の乾いている北へ
6月のある一週間、東京の空気が水になります。梅雨。灰色の蓋が空にかぶさり、街は長い湿った辛抱の季節に入ります。多くの人はそれを受け入れる。私たちはもっと単純なことをします。北へ走るのです。雨には端があって、その端の向こうでは、光がやわらかく、乾いたまま残っているから。
これは天気からの逃走ではありません。ゆっくりと寄りかかるような旅です。キャンパーが本州の背骨を北へとたどり、やがて北海道へ渡る。雲が薄くなり、最初の花が開く場所を追って。6月は、北が「夏」を思い出す月です。
出発の前に — 雨もまた、旅の一部
最初に雨が降った朝に、あわてて東京を飛び出す必要はありません。関東の6月の雨には、それ自身の美しさがあります。マツダ・プレマシーは、その雨を眺めるのにちょうどいい場所です。
紫陽花(あじさい)が、いまこそ本領を発揮します。鎌倉のあたり、箱根の山あいでは、丘いちめんが青や紫、あの不思議な緑がかった白に染まり、その色がいちばん深く見えるのは、まさに雨の降っているときなのです。花びらが水を抱く。寺は濡れた石と杉の匂いで満ちる。
だから、北へ走り出す前に、一日か二日、雨とともに過ごしてください。箱根のそばに車を停め、座席が濡れない程度にドアを開けて、ケトルを温めながら、紫陽花にそのゆっくりとした仕事をさせておく。急ぐことはありません。北はどこにも行きませんし、乾いた天気も来週もそこにあります。
北への漂流 — 予定ではなく、ゆるやかなかたち
箱根から、私たちは鼻先を東北へ向けます。東北自動車道がいちばん分かりやすい一本の糸ですが、大切なのは、その糸から降りること。長い距離を、急がない日々に分けていきます。
一日目か二日目 — 南東北へ。 福島や磐梯高原のあたりで、雨はだんだん確信を失っていきます。雲が丘から持ち上がる。山あいの道の駅に停まり、車に積んだ小さなコンロで何かを煮て、計画の言う場所ではなく、その日が終わった場所で眠る。
真ん中の日々 — 急がない東北。 ここが旅の静かな心臓部です。田んぼには水が張られ、朝の静けさのなか、鏡のように平らに光っている。町は小さく、のんびりしている。山形や秋田を、決まった線も持たずに漂い、道はその表情で選ぶ。たいてい夕方には温泉へ。東北は温泉に気前がよくて、誰も知らない町の400円の湯のほうが、有名な湯より、ずっといい。手足がほどけて、よく眠れます。
海へ、そしてフェリーへ。 やがて道は青森で本州を使い果たします。ここから津軽海峡を渡る短いフェリーで、北海道・函館へ。キャンパーごと乗り込んで、デッキでコーヒーを飲んでいるうちに、一時間半後にはまるで別の気候のなかにいます。
北海道 — そして、最初のラベンダー
東京の湿気から来たなら、6月の北海道は啓示のようです。空気は澄んで涼しく、梅雨はこの島にほとんど触れず、北の長い夕暮れのなかで光がいつまでも続く。私たちは島の中央、富良野を目指します。ラベンダー畑が、ゆっくりと開きはじめる場所へ。
やさしく、正直に言っておきます。ラベンダーの盛りは7月です。けれど6月の中旬から下旬には、早咲きの品種がもう咲きはじめていて、畑は静かで、有名な農園もまだ夏の人混みには包まれていない。緑の丘に最初の紫の列、それを見つける蜂、午後の陽が畝を温めると立ちのぼる、かすかでまぎれもない香り。(花が旅のすべての理由なら、出発前にぜひ各農園の開花情報を確かめてください。開花の時期は、その年の天気で一、二週間ずれます。)
美瑛か富良野のあたり、北海道の広い夕暮れにキャンパーを停めて、うねるパッチワークの丘が金色に、やがて灰色に変わっていくのを眺める。6月のここの光は、7時を過ぎても残っています。どこにも、行くべき場所はありません。
車に積んでいるもの、そして静かな実務のこと
プレマシーは小さく、正直で、一週間や二週間を暮らすのにちょうどいい一台です。フラットに眠れる。シングルバーナーのコンロ、ケトル、折りたたみのテーブル、そしてラベンダー畑のそばで何も考えずに朝食を作れるだけの基本的なキッチン道具を積んでいます。保険は含まれていますし、ETCカードも。これはこの旅では大事なことで、北への道は高速をよく使い、ETC料金は静かに積み重なるから。料金所のたびに現金を探す旅にはしたくありません。
6月の北への漂流に、いくつかのやわらかい覚え書きを。
- 夜はたいてい温泉。 東北も北海道も、小さな公衆浴場であふれています。ドアポケットに500円玉を、手の届くところに小さなタオルを。それが夕方のリズムになります。
- 日の終わった場所で眠る。 道の駅はキャンパー旅の友。平らな駐車場、トイレ、たいてい地元産品の売店も。6月はほとんど予約しません。北には余裕があります。
- フェリー。 青森—函館の便は車を楽に乗せてくれます。当日の朝に時刻を確かめ、少し余裕をもって着くこと。急かされる場所ではありません。
- 暖かい一枚を。 6月の北海道の夕暮れは、東京が汗ばんでいても、涼しい。車の窓は冷たく澄んだ空気に開きます。朝のコーヒーには、セーターが一枚ほしくなります。
6月のかたち
北へ向かって本当に追っているのは、ラベンダーでも、乾いた天気でさえもありません。それは、ペースの変化です。雨の下で息をひそめた街を出て、急がない数日のあとに、夕暮れの光が終わらず、最初の花がやっと咲くかどうかを決めかねている場所へ着く。運転はその中のいちばん小さな部分。停まることが、旅なのです。
6月のゆっくりした北への漂流が、あなたの探している旅なら ── 東京から紫陽花へ、紫陽花から最初のラベンダーへ ── ひとことお便りください。日程と、どの車があなたとこの道を走りたがっているかを、ご相談しましょう。